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   『通路側のE席』 ④
  
  またまたワゴンサービスが13号車にやって来て、前方から我々の席に近づく。
 やたらと来るなぁ。そう思っていると、すでにチューハイを飲み終えていた隣の男がお決まりの
 科白を聞かせてくれる。「ナニ飲ム?」 まだ、私のお茶は半分以上残っていた。
 
  積雪量が少し多めなのか、富士山は見える範囲の4割ぐらい純白の雪をかぶっている。
 南の宙に向かう太陽が申し分ない明るさで3776メートルの峰を照らす。背景は雲ひとつない
 青空。新幹線から見ると、この時間は完全な順光である。
  それが見え始めたことを知らせようとすると、隣の男は2缶目のチューハイをテーブルに置 
 き、「アレ、フジサンデスカ?」 ちょっと興奮気味に言った。肯いた私を見るや、彼はそそくさと
 携帯電話のカメラのシャッターを何度も切る。これから関西国際空港に行けば会える我が子
 に、日本一の山を見せようというのだろう。丸々とした背中をさらに丸めて画面を覗きこむ。
 その格好が子供のようだった。

  最初は手前の山が遮って半分程度しか見えないが、しばらく走ると角度が変わり、建物が多
 少の邪魔はするものの美しいコニーデがくっきりと姿をあらわす。車窓からのシャッターチャン
 スはここだ。
  私も携帯電話をカメラモードにして、彼と並べるようにして撮影してみる。
 チャンスが終わると、彼は首をかしげながら撮った画像を私に見せる。カメラの性能の問題な
 のか、設定が合わないのかボケた写真ばかりだ。
  私が撮ったものを見せると、「コレ、イイデス。」と言う。
 赤外線という言葉が通じるとも思えなかったので、私は特に説明せず彼の電話を拝借、写真
 のデータを送信してあげた。相当嬉しそうだ。すると、しばらく悩んでから「セキザイセンネ。」
 得意気な顔で言ってきた。意外にも知っていたようだ。・・・ちょっと違うけど。
 「そう、赤外線ね。」 とだけ言っておいた。
  
  席を立った私は身体を反転させ、14号車との間にあるトイレに向かう。
 荷物を置いたまま席を離れることには、毎度一抹の不安を感じるものである。
 ほんの少しだけ、ネパールの長閑な風景のなかに、ほんのほんの少しだけだが、心の片隅に
 ある不信感が、車両間の自動扉が閉まる寸前に私を振り向かせた。
  そこには、E席の背もたれの上にひょっこり顔を出し、私がトイレに入ったのをしっかりと確認
 しようかという眼差しで、じーっとこちらを見る彼がいた。
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by h_arima3 | 2007-02-02 00:22 | Football総合
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