ホーム | ブログ トップ | サイトマップ
sw0503.exblog.jp ブログトップ
    ふた駅。
    寒いので、ちょっと心温まるお話をひとつ。

   地下鉄に乗っていたときのこと。暦は祝日。夕方。
  
   乗っていた車両の座席は埋まっていて、座っている人と同じくらいの数の乗客たちが揺ら
  れながら立っていた。 私が目指す終着駅までの道のりは、あと8つほどの駅を経る。
   開閉を繰り返すドアの近くで吊り革を握った眼下に、大きなスポーツバッグを抱えた高校生
  が今にも眠りそうな表情で腰かけている。両腕の影で全ては見えないが、バッグには校名が
  記されている。
   次の駅、消費者金融の広告の下でドアが開く。百貨店の大きな紙袋を両手に持った女性
  がホームと車両の間隙をゆっくりと踏み越えてきた。孫への土産でも買い込んだのだろうか
  紙袋はなかなか重そうだ。
   ドアが閉まりかけた瞬間、高校生が勢いよく立ちあがった。焦ってホームに駆け出してゆく
  のだろうと思い、即座に私は体をよけ、走路を作ってみた。 が、その必要はなかった。
   「どうぞ、座って下さい。」 抱えていたスポーツバッグを素早く肩に掛けながら、日焼けした
  笑顔が言う。
   「いえいえ、お疲れでしょう。ふた駅先ですぐに降りますから。」 左右の紙袋の底面は床に
  落ちているが、張りのある声が答えた。
   しばらくの間、一人分の席が空くことになった。その30秒ほどが、長く感じた。
  
   「ホント、ご遠慮なく、僕は平気なんで。」 白い歯をこぼしながら、スポーツバッグは大股で
  隣の車両のさらにその先へと消えていった。

   すぐには座らなかった。申し訳なさそうに、少し恥ずかしそうな微笑が周囲を見渡す。
  さぁ、お座り下さい。そんな空気が休日の車内に漂った。ふた駅で降りるにしろ座ったほうが
  よさそうだ。車窓から陽の光が射しこむことはあり得ないが、あたたかく柔らかいそよ風さえ
  感じられそうだった。

   次の次の駅。列車がホームに入る。ほとんど人影がない。3人ほどいただろうか。
  毎週2日ほど眠るビジネス街の直下にある駅だ。吊り革を握った眼下から、ふたつの紙袋が
  細く白い手指とともに自動扉へ向かうことはなかった。たしかに、この駅のホームに膨らんだ
  百貨店の紙袋は似合わない。
   そのままドアは何度も開閉を繰り返していった。大きな二つの紙袋が再び車両とホームの
  間隙をゆっくりと踏み越えたのは、終点のひとつ手前の駅だった。  
[PR]
by h_arima3 | 2007-12-09 19:58 | Football総合
<<     12・16     3 BIG GAMES... >>
以前の記事
お気に入りブログ
人気ジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
映像業界のお助けサイト
「クイックオーダー」


ENTACL GRAPHICXXX

Copyright © 1997-2005 Excite Japan Co., Ltd. All Rights Reserved.
免責事項 - ヘルプ - エキサイトをスタ-トペ-ジに | BB.excite | Woman.excite | エキサイト ホーム