仕事の合間に喫茶店でランチを。
食後はコーヒー紅茶、どちらになさいますか。
やがて、テーブルにはティーカップ。
ソーサーには薄切りレモンとスプーン。
「お砂糖はお使いになりますか?」
ふと甦ったのは、20数年前の記憶。
小学校4年生だったか、父と自動車のショールームを
訪れたときのこと。商談用のソファーに座ると、
その頃まだコーヒーが飲めなかった私の眼前には
若い女性のスタッフの手により紅茶が運ばれた。
「レモンになさいますか?ミルクになさいますか?」
喫茶店には行ったこともなかった。スターバックスなどはまだこの世になかった。
丁寧な振る舞いで、綺麗なカップとともにサーブされる一杯の紅茶に、異常な贅沢感を覚えた記憶。
ときは流れた。流れに流れた。
この一杯の存在は、なんにも変わらない。
この一杯は、心にほんのりと響く一瞬の安らぎを与えてくれた。